いぬごや

よくはたらくいぬです

2022-01-01から1年間の記事一覧

暮れの日

年明けの私のために台所だけは綺麗にした 12/21 ガラス製のマドラーを買った。ソーダ色とレモン色の2本。ねじねじの棒キャンディみたいな持ち手で、色味や気泡の具合まで飴にそっくりな見た目をしている。同じ作家さんが作ったマドラーをすでに何本か持って…

希薄

抜け殻のときほど水辺に近づく癖 カメラロールの一角に、すりガラスみたいな色をした薄曇りの海や、夜の更けた知らない街、都会から手近なそう綺麗でもない海が妙に集っている時期がある。5年ほど前だ。前の会社でおよそ2年目くらい。仕事を覚え始めて気持ち…

概念としてのチキンバスケット

チキンバスケットという食事がある。その名のとおりバスケットにフライドチキンやチキンカツ、からあげなどの鶏肉料理を主役として詰めたもので、そのほか店によってはポテトフライやトースト、茹で卵なんかが脇役として一緒に収まっている。私はこれが大好…

祝いの夕べ

クランベリーみたいに華やかでうまい赤ワイン12月になった途端、どんどん日が落ちるのが早くなっていく。昨日の夕方頃あまりに眠くなったので、マフラーを巻きつけて会社のビルの中庭に出て、空が藍色に暮れていくのをぼんやり眺めながらコンビニの豚まんを…

あの日の先にあったもの

前の冬ごろにやっていた、アセクシャルとアロマンティックを題材にしたドラマを全話続けて観た。ストーリーの結末はアロマ/アセクの生き方や選択というよりは、自分が本当にやりたいこと、家を守るという強迫観念、パートナーシップをどうするか、のみっつ…

肉を焼く、傷を埋める

土曜のこと 「魚屋でアジを買ったから今夜はアジフライ」「じゃがいもが安かったからコロッケにしよう」みたいな感じで、必要な食材をちょっとだけ(それも気まぐれで)手にいれて、それを随時料理して晩のおかずにするような身軽さによく憧れる。うちは食費…

緑のあかり

ファミレスには自由な夜のイメージがある。実家から通勤していた頃、短い一人の時間を少しでも満喫するためにバーミヤンでエビチリとレモンサワーだけを頼んだり、家の近くに友達が住んでいた時期は、徒歩圏内のサイゼリヤで深夜にデキャンタワインを飲んだ…

赤い飴を囓る

このりんご飴は当たりだった 毎日どんどん涼しく、空がパキリと澄んで高くなっていくのが気持ちいい。この週末はとくに予定がなかったので、発売を待ちかねていた本をベッドの脇に積みあげて次々読んだり、先日神社のお祭りで買っておいたりんご飴(冷やして…

最近の食事のこと

10月11日 徳島の田舎から届いた、讃岐うどんの打ちたて生麺をゆがいて釜玉うどんに。道の駅で買ったものらしい。大量の大根おろしと生卵を乗せて、刻み海苔をまぶし、すだちをたっぷり絞って食べた。丸亀製麺とか冷凍の讃岐うどんを日々よく食べているけど、…

秋の魚がからだに泳ぐ

ここ一年くらいで、急に身体が寿司のありがたさに気づいた。私の好物はカッと火が点くような中華料理やバターたっぷりの洋食で(点心や海老チリ、カニクリームコロッケとかラムチョップを心から愛してる)、もちろん寿司や刺身も喜んで食べていたけど、ちょ…

水の巡る生きもの

岩盤浴がすごく好きだ。冷房で凍りついた骨や筋肉が熱でゆるんで、体内で澱んでたいらないものが全部サラサラの汗に溶けて出ていって、全身がすっと軽くなる。サウナは裸でじっと座っていなければならないのがなんだか所在なくて、人よりあまり長時間入って…

トマトとにんにくと塩と

プランターで育ててるバジルを乗せた最近、よくトマトパスタを作る。うちでパスタを作るときはだいたいペペロンチーノかナポリタンの二択で(そこに稀に明太子パスタとか納豆パスタが入ってくる)、たとえば春にはペペロンチーノに菜の花をたっぷり入れたり…

晩夏の灯

顔を近づけてじっと見てると案外けむい昨夜、うちで線香花火をした。古民家みたいな戸建てに住んでいるので、手持ち花火ができるくらいのささやかな庭と縁側がある。庭は雑草生え放題であまり手入れできていないけど、縁側がすごく好きだ。フローリングと梁…

ハッカの香る家

薄荷という名の新しい猫を家に迎えた。海苔をまいたおにぎりみたいな柄をした、白黒模様の仔猫。うちの庭で生まれ育ったのを梅雨ごろからずっと見守っていて、そのうち保護して育ててもいいなと思っていたところ、とある夜にチャンスが飛び込んできて(とい…

豆花の夏

ボタニカル女が選挙へゆきます近所の工事現場の騒音にずっと悩まされている。大きい音が苦手な恋人が気の毒だったので、先日ちょっといい耳栓を贈った。冷房の効いた寝室で、それを耳に詰めてニコニコ快適そうにしている恋人とベッドに転がって、お互い本を…

飴玉の猫と暮らす

猫を飼い始めた。細くしなやかな三毛猫の姉妹。メスのどうぶつを飼ったことがなかったのでどんなものかと思っていたら、懐っこくて大胆で気まぐれで、人間を頼るのがうまく、甘えながらも澄ました表情を崩さない。実家で一緒に暮らしていたもっちり灰色のあ…

鶏をゆでて食べよう

鶏むね肉をしっとりむちむちのゆで鶏にするのが得意だ。たっぷりの水を鍋に張って、おろしにんにくと塩ひと振りに料理酒少し、葱の青いところ数本、鶏むね肉のかたまりを入れて中火にかける。コンロの近くに椅子を持ってきてぼんやりしたり食器を洗ったりし…

難破船の夜

とうとうコロナにかかってしまった。ワクチンだって打ったし、2年近く色んなことを我慢して行儀よく暮らしていたというのに。かかるときは本当にあっけない。恋人とふたりまとめて罹患したので、味がわからなくなった恋人が美味しく食べられるものをうんうん…