いぬごや

よくはたらくいぬです

鶏をゆでて食べよう

鶏むね肉をしっとりむちむちのゆで鶏にするのが得意だ。たっぷりの水を鍋に張って、おろしにんにくと塩ひと振りに料理酒少し、葱の青いところ数本、鶏むね肉のかたまりを入れて中火にかける。コンロの近くに椅子を持ってきてぼんやりしたり食器を洗ったりしながら暇をつぶし、沸騰したらすぐ鍋にとびついて火を止めて蓋をする。そうしたらそのまま30分間ほっとくだけ。

時間が経ったらまた鍋にとびついて肉を取り出す。余熱で最低限火が通った身をアチアチ言いながら裂いたときの、みずみずしくて、抵抗なくしっとりほどける手ごたえの心地よさ。ほんの少し桜色を帯びたミルクガラスみたいな艶がとてもきれいでいつも見惚れてしまう。もうちょっと火が通ってしまうと途端にぱさぱさになるし、数分でも早いと生のところが残って加熱し直すはめになる。この加熱方法が一番ラクで一番失敗しなくて、その労力で得られる成果としては反則なほどおいしい。熱々を手でむしったところにマヨネーズをつけてつまみ食いする、料理当番の特権。

なにがすごいって、そのゆで汁がすごい。鶏肉を黙々とむしり終えてふと鍋に意識を戻すと、上品な黄金色にキラキラ光るスープが勝手にできあがっていて毎回なにごとかと思う。一度、ゆであがったときに無意識のままザバーとざるにあけてしまい、おいしい鶏スープがシンクに勢いよく消えていったときはさめざめと泣いて落ち込んだ。それ以来恋人が「ゆで汁捨てちゃだめだよ」と言ってくれる。先日は作り置きを含めてたくさんの鶏をゆでてむしって、ゆで汁を少し調味したところにフォーの乾麺を入れたのを作り、その上にごま油であえたゆで鶏ときゅうりの塩もみを盛って、刻み葱の塩レモンだれをかけて食べた。それと、湯むきしたまるごとトマトを蜂蜜梅とあわせてだしに漬けておいたのと、作り置きのコンビーフ入りポテトサラダ。

急にゆで鶏のことばかり書いてどうしたという感じがするけど、とくにどうもしておらず、そういうことばかり考えながら毎日穏やかに暮らしている。残して冷凍しておいたゆで鶏は、近いうちにスイートチリソースで和えてレタスで包んで食べよう。