いぬごや

よくはたらくいぬです

飴玉の猫と暮らす

猫を飼い始めた。細くしなやかな三毛猫の姉妹。メスのどうぶつを飼ったことがなかったのでどんなものかと思っていたら、懐っこくて大胆で気まぐれで、人間を頼るのがうまく、甘えながらも澄ました表情を崩さない。実家で一緒に暮らしていたもっちり灰色のあの子とはずいぶんと違う。

譲り受けた当日は、生まれて初めての広い畳に興奮したのか、2匹とも家じゅう駆けまわってほとんど眠ってくれなかった。暗い部屋でまんまるの目を光らせて、出会ったばかりの人間に不思議そうに近づいてくる。タヌキみたいに膨らんだ尻尾を撫ぜて早く寝てくれ〜となだめながら、その晩やけに明るかった満月を雪見障子のガラス越しにぼんやり眺めて過ごした。今では毎晩ベッドで一緒に寝てくれるようになったけど、あの夜のことを今後もときどき思い出すだろうな。

杏色と飴色の毛並みがきれいなので、あんず飴の杏、カンロ飴の甘露と名づけた(意図せず杏露酒みたいになってかわいい)。杏ははじめから物怖じせず人懐っこい子で、甘露は初日こそ物陰で絶望していたものの、今ではよく喋りよく人間のうえに乗る甘えん坊になった。

毎朝目を覚ますとベッドの上に人間と猫が大集合していて、火照った4つの体温が大きな熱のかたまりみたく息づいている。生きもの達がスースー寝息をたてて少し汗ばんで、ほっぺたや毛並みを熱々にしながらも身体を寄せ合っているさまにプリミティブな「家族」を感じて、同じ血が流れているように錯覚するのがけっこう幸せだ。猫の姉妹は揃いのお皿でごはんを食べて、人間のつがいも素麺とか天ぷらを一緒に食べて、密度の高い女所帯でそれなりに暮らしている。