いぬごや

よくはたらくいぬです

暮れの日

年明けの私のために台所だけは綺麗にした

12/21

ガラス製のマドラーを買った。ソーダ色とレモン色の2本。ねじねじの棒キャンディみたいな持ち手で、色味や気泡の具合まで飴にそっくりな見た目をしている。同じ作家さんが作ったマドラーをすでに何本か持っているけど、コップやグラスに映えるのでついつい買い足してしまう。これが小包で家に届いたとき、梱包材の中にお菓子のボンタンアメの箱がまぎれこんでいた。ショップからの「オマケです。食べてね」という小さなカードに嬉しくなる。

夕飯は茹で豚と蒸し野菜。豚バラブロック肉のかたまりを40分間とにかく茹でるだけなのに、驚くほどトロッと柔らかく火が通る。甘い蒸しキャベツに包んで味噌だれ(味噌+マヨネーズ+みりん+砂糖)をつけて食べた。

12/22

仕事から帰ったあと、近くに住む友人を家に招いてホットプレートで焼肉をした。れんこん、ピーマン、パプリカ、カボチャ、ごま油と塩で和えておいた舞茸、あと前日の夜に仕込んでおいた蛇腹きゅうりをメンマや黒酢で和えたもの。肉は友人が買ってきてくれた。ほったらかしにせず丁寧に油や蓋で世話をすると、ホットプレート調理の野菜はとてもおいしく焼きあがる。表裏をじっくり焼きつけたれんこんと、肉厚でジューシーなパプリカがとくに好評だった。

友人とパートナーがすっかり打ち解けてくれたのがしみじみと嬉しい。友人とは学生時代からの長い仲だけど、我が家で夜遅くまで一緒に過ごすことが増えて、表面的なお喋りだけじゃなく、どんどん深くて純粋な話ができるようになってくる。お酒を飲んで笑える話ばかりをするんじゃなくて、食後にゆっくりお茶を飲みながら、素面で色んなことを言語化できる感じ。友人はストレートだけど将来子どもを持つつもりはないようで、私とパートナーに「子なし同士ずっと仲良くしよう」と言ってくれた。つがい扱いしてくれる人がいるたびに、私たちの存在の解像度が増していく。

12/23

新品のセーターと革靴を身につけて歩く、真冬の朝特有の無敵感。誕生日にパートナーからもらったダークブラウンの革靴は、すぐ足の形に馴染んで私の一部になった。つるりと品のあるプレーントゥ、艶とマットの中間でしっとり光る質感が美しい。

年内の仕事の山をこの日になんとか越えたので、テイクアウトの握り寿司を買って帰った。冬のごちそうセットみたいな名前のやつ。私はねぎとろと〆サバが好きで、パートナーはいくらが好き。

12/24

よく晴れて気持ちのいいクリスマスイブ。引越してきたばかりの去年と違って、今年はささやかなクリスマスツリーもある。昼にパートナーとベーカリーレストランに出かけて、ローストポークサンドイッチ、サルシッチャとパンの盛り合わせ、スペアリブを分けあって食べた。この店はパンはもちろん肉料理がとてもおいしい。すばらしく絶妙な塩加減で焼かれた肉はパンとよく合う。むぎゅっとした食感の酵母食パンといちじくのパウンドケーキ、あと帰りに白のアイスワインを一本買った。

翌日にローストチキンを食べさせてもらえるパーティーにお呼ばれしていたので、この日の夜は家で慎ましくおいしいものを食べることに。パートナーがお歳暮でもらったハムを分厚く切ってステーキにしたのと、もらいもののテリーヌ、あとサラダとにんじんのポタージュ、ふるさと納税のラフランスを切ってオリーブオイルと塩胡椒をかけたものとか(もらったものばっかり)。アイスワインはトロッとした冷たい口あたりに甘みが凝縮されていて、少量で満足できるし飲みごたえがあって最近気に入ってる。

12/25

パートナーの恩師宅のクリスマスパーティーに招待された。さすがにアウェイすぎて緊張したので、以前働いていたケーキ屋のクリスマスショートケーキをお守りみたいに抱えていく。丸ごとオーブンで焼いたローストチキンやシャンパン、おいしい料理をたくさんご馳走になった。

なんにも臆せず「うちのパートナーです」と紹介してもらったり、年配のおばさま達が「なれそめは?」とはしゃいでくれたり、今までにない経験ばかりで目が眩む。世間体気にしいサラリーマンの私と違って、自営業のパートナーは実は同性と付き合うのが初めてで、だからこそ逆に、私が伴侶であることをさして特別なことだと思っていないらしい。知らない世界のことを教えてあげる側のつもりでいたけど、新しいところに連れていってくれてばかりだ。

それから年末…

クリスマス以降はバタバタしているうちに日が過ぎて、無事仕事も納まった。納め日の管理職はあちこちに挨拶まわりをしているうちに日が暮れてしまう。苦楽をともにした管理チームと火鍋を食べに行って、会社ではできない話でさんざん笑って、真っ赤な薬膳スープで煮たラム肉や野菜やキノコをたくさん食べた。今の会社がすごく好きというわけではないけど、部署のみんなのことは心から愛している。

大掃除は疲れない程度に済ませて、年越しそばに乗せるえび天ぷらの支度をしたり、干し椎茸を水で戻して旨煮を作ったり、おなじみの年越し準備をのんびり楽しんでいる。年末年始がとても好き。クリスマスみたいに華を求めて外へ出ていくんじゃなく、こもるために家を居心地よく掃き清めて、おいしいものをせっせと用意するのが性に合うんだろうな。

手塚治虫が描いた牝鹿みたいな、すらりときれいな年上のパートナー。うんと年上で美人さんなのに、最近はずいぶんと赤ちゃんみたいな顔を見せるようになった。毎日同じものを食べてぴったりくっついて眠って、一緒にいればいるほど同じ血が流れだすように思える。今年いよいよパートナーシップ制度を申請したとはいえ特に変わったことはないけど(猫はえらく増えたが)、変わりなく末永く暮らそうねえ。そんな年でした。