いぬごや

よくはたらくいぬです

食べてばっかりの五日間

5/3

ゴールデンウィーク初日。昼前に起きて食事に悩む。前夜の夕飯で余らせたにんじんのかきあげを揚げ直すついでに、少しずつ残っていたしいたけ・いんげん・なすも天ぷらにしてごはんに乗せ、天丼を作って食べた。「今日は天ぷらを作るぞ」と意気込んで支度をするとなかなか面倒だけど、こうして残りものの端っこをさっと衣にくぐらせて揚げてしまうとなんてことはない。ミイさんはしいたけが嫌いなので私が独占したけど、塩をつけて齧るとほかの何よりおいしかった。すぐ揚がるしこんなにおいしくてしいたけは偉い。

夕方、近所に住む友人がいちごとすいかを手土産にやってきた。いちごはなぜか異なる生産者(私が作りました のパターン違い)のものを2パック。食べ比べてみたら、同じ品種なのに形も味もぜんぜん違って驚いた。黄色くて甘いすいかは去年の夏にも一度買ってきてくれたことがあって、季節の巡る早さを感じる。こうやって果物を携えて遊びにきてくれる友達が近所にいるのは尊いものだね、みたいなことを以前も書いた気がする…

夜は手羽中パリパリ焼き2種

5/4

氷をいっぱい入れてゴクゴク飲める気軽なデイリー白ワイン、および流行りの調味料とか外国のインスタントラーメンなんかを衝動買いしたくなってKALDIへ出かけた。理性をともなわずに行くKALDIほど楽しく危ない場所はないし、仕事帰りに「コーヒー豆だけ買って帰ろう」と立ち寄ってコーヒー豆以外のものを買わずに出られたこともない。

パッションフルーツの香りがする白スパークリングワイン、冷凍シナモンロール、チョコチップがごろごろ入ったオランダのチョコクッキー、瀬戸内レモン塩ラーメン、かつてドはまりしていたのに売り切れ続きで滅多に見かけなくなってしまったピリ辛えび塩、去年の夏から気に入っている希釈レモネードの原液を買った。えび塩は年単位でずっと見つけられなかったから偶然手に入って本当に嬉しい。

ミイさんにも「好きなもの選んでいいよ」と言ったら嬉しそうに店内を物色し始めたものの、めぼしいものが見つからなかったらしく「くだもののかんづめ…」と鳴いて戻ってきた。KALDI来てそれしか思い浮かばなかったのか。無欲。今度スーパーでみかんの缶詰買おうね。

風が気持ちいい夕刻の散歩を楽しみ、初めて行くアメリカンダイナーでハワイアンバーガーとオニオンリングを食べてラムコークを飲んだ。ミイさんは照り焼きバーガー。焼きパイナップルとバーベキューソースの組み合わせがすごくジューシーでおいしい。ゴールデンウィークに食べるものとして、肉汁滴るでっかいハンバーガーというのは大正解だと思う。

明るい時間のアルコール×バーガーは天国

5/5

前職で仲良くしていた同僚のお姉さんと、昼に待ち合わせて食事をしに行った。仕事の合間によくランチをともにしていたけど、1時間しかない休憩時間で外へ食べに出かけるとそうゆっくりすることはできないから、食事とお茶をしながら何時間も一緒に過ごすのが今更ながらすごく新鮮。4年も同じ職場にいたのに、知らないことがいっぱいある。

ぜんぜん人混みでも都心でもない閑静な住宅街にあるレストランに行く約束だったので、思い切ってマスクをせずに出かけてみた。コロナ禍から今までずっと、かなり律儀にマスクをつけているほうだから、それだけのことなのに妙にドキドキする。口元の表情がつねに外界に晒されているのってこんなに緊張するものだった?帰ったら表情筋がいつもと違う疲れ方をしていたし、ついでに唇がものすごい勢いで乾燥して驚いた。愛用しているワセリンリップが近年なかなか減らないね〜と思ったらそういうことか。

サルシッチャとパンの盛り合わせを食べて、チャイとジンジャーエールを飲み、ひと駅の距離を喋りながら歩いた。マスク越しじゃなくて直に浴びる、濃厚な緑の匂いをはらんだ力強い風が気持ちいい。初夏の白い陽射しを肌や気温だけじゃなく嗅覚でも色濃く感じて、蝉のいない静かな夏休みみたいな午後だった。

年齢も社歴も違う同僚(なんならめちゃくちゃ憧れていた)からただの対等な友人になったからこそ、初めて話せるようになったことがたくさんあって、でも同時に繋ぎとめるものがない不確かな関係性を寂しく思う気持ちもある。心身ともに馴染みきった環境と、そこで過ごした時間がもう過去のものになったことを受け入れるのには、まだちょっと心細さがつき纏う。

5/6

明け方まで仕事していたらしいミイさんがずっと寝こけていたので、朝ひとりで起きて本を読みながら長風呂を楽しみ、ハムエッグとトーストとサラダとヨーグルトの朝食を作って一旦叩き起こし(食べてまたベッドに帰っていった)、ミイさんが好まない台湾パイナップルをデザートに遠慮なく平らげ、午後に初めてキッシュを焼いてみた。

常温に戻した冷凍パイ生地を麺棒でのばし、卵液に混ぜる具はほうれん草とベーコンとたまねぎとプチトマト。似たようなスペインオムレツをよく作るけど、それと違って卵を2つしか使わずに済むのはありがたい。いくつかレシピを見比べたところ、オーブンの温度が180〜200度の幅で揺れていたから今回はとりあえず180度で焼いてみた。茶碗蒸しとオムレツの中間くらいの程よいしっとり加減がなかなかおいしい。

夕方、ようやく起きてきたミイさんと一緒に近所の喫茶店へ出かけた。風が強くてシャツワンピースの裾と伸びてきた髪がバタバタ暴れる。おやつのホットドッグを半分こして食べてコーヒーを飲みながら互いに書きものをして過ごし、私は読みかけていた本をついでに読破して、スーパーで肉や野菜を少し買って帰る。豚スペアリブのすごく大きな塊がタイムセールで半額で買えた。骨ごと1時間煮た塩豚と副産物のスープを在宅勤務の日に作ろう。スペアリブ入りスープとして食べてももちろんいいんだけど、汁物と別々にした肉をごま油と塩をほんの少しだけつけて齧ると最高にうまい。

5/7

猫の薄荷(末っ子の白黒)が夜通し悪事を働いていたので寝不足。夜になるとキッチンのドアの浮いた木材を一生懸命剥がして遊ぶ⇔叱ると構ってもらえた認定して大喜びするループを本当にやめてほしい…もう仔猫とは言えない月齢になってきたけど、猫の躾でミイさんとヒーヒーしてるとこれだって立派な子育てじゃんねと思う。

どういう顔?

昨日までと打って変わってめちゃくちゃ雨。こういう日に家事を怠ったり雑なものを食べたりすると精神が参る。起きてとりあえず風呂に浸かってから、台所を掃除しつつ時間をかけてにんじんのポタージュを作った。私は「火の通り切っていないにんじんの風味」がどうしても苦手なので、ほかのあらゆるポタージュと違い、にんじんだけはあらかじめレンジでざっと火を入れたり15分くらい煮詰めたりしながら素材の旨味を一部殺さないといけない。でもそうやって丁寧に作ると、砂糖は入れていないのに驚くほど奥深い甘みを感じる手の込んだポタージュができる。土曜に焼いたキッシュの残りと、ミイさんが買ってくれたミスドのドーナツと一緒に食べた。

日中はたくさん本を読み、英気を養うために夜はホットプレート焼肉。牛肉の赤身があらかじめにんにくでマリネされているお気に入り商品があるので、それをミイさんとどんどん焼いて黙々と食べた。野菜はれんこんオンリー、次の日から仕事なので潔くノンアルというストイックさ。シンプルに焼いた赤身の肉をぎうぎうと噛み締めると、身体の芯が静かに燃えていくような心地がする。力を蓄えて、でも張り詰めすぎないようにやってゆこうね。