いぬごや

よくはたらくいぬです

サンドイッチの行間を読む

2/17

退職に向けた引き継ぎの終わりがようやく見えてきた。社内周知もひととおり済んで、営業日でいうとあと6日ぽっちしかない。何年もかけて信頼関係を築いてきたディレクターやエンジニアが残りわずかな日々を惜しんでくれるたび、これでよかったのかなと心臓がもみくちゃになるけど、すごくまっとうな別れになりそうで安心している。大好きな同僚たちに次々置いていかれるんじゃなくて、見送られる側になれてよかった。でもやっぱり寂しいな〜!!!という情緒の乱れ。

ここ最近引き継ぎで夜帰るのが遅く、簡単な鍋とかスープばっかり作っていたので、この日は早めに帰ってえびのトマトクリームパスタと椎茸のポタージュを作った。パスタは生えびの殻をむいてにんにくとオイルでソテーしたからいい香りがしたし、椎茸のポタージュはこしょうがよく効いていておいしい。パートナーはきのこ全般が好きじゃないわりに、ブレンダーにかけて原型がなくなると喜んで食べる。平日の夜に、その日食べたいと思った熱々の料理を作って食べられる暮らし、これからも守れるといいけどどうなるか…

2/18

ひさびさに予定のない週末。パートナーがずっと家で仕事をしていたので、一日じゅう横で文章を書いたりチョコレートを食べたりして過ごす。夜は鶏胸肉が安かったのでチキンカツを作った。

でっかい鶏胸肉を観音開きにして包丁で叩いて柔らかくして、ひらべったく削ぎ切りしたのをマヨネーズ・塩・おろしにんにくで揉み込んでおくと、洋食屋で食べるカツみたいにかなり手が込んだ風の下味がつく。マヨネーズが何か頑張ってくれた感じで肉がジューシーになるし(お酢が作用するのかしら)、サクッと揚がって非常にうまい。揚げものに添える千切りキャベツは軽く蒸して、ちょっとだけ塩で揉んで冷ましといたのが好き。

2/19

昨晩、チキンカツを作り置き分も含めてたくさん揚げたから、朝兼昼ごはんにソースと千切りキャベツたっぷりのチキンカツサンドを作った。分厚いサンドイッチをパン切り包丁でザクッと切り分ける瞬間の小気味良さ。

ドラマのカルテットを一話から観ている。地上波で初めて観たときに雷が落ちたような衝撃を受けて、こうしてはじめから辿るのはもう何回目かわからないほど。パキリと清涼で冷たい真冬の軽井沢の空気に、金色の光の粒がきらきら散るライティングが惚れ惚れするほど美しくて、いつも言葉を失ってしまう。静謐でかけがえのない時間を羨むと同時に、その刹那性に胸がひりひりする感覚がたまらない。

一話の終盤にとても好きなシーンがある。巻さん・家森くん・別府さんの3人がキッチンで朝食を作りながらその場で食べる、特に印象的な会話が交わされるわけでもない些末な場面(すずめちゃんはまだ寝ている)。焼きたてのベーコンエッグをフライパンから直接トーストに挟み、包丁でざっくり半分に切り分けて、お皿に盛りつけたりはせずにカウンターキッチンで立ったままぽんと手渡しあい、齧りつく。几帳面な別府さんが、トーストに挟みやすいように目玉焼きを両面焼きにしたのが一瞬見えてフフと思う。切り分けるときに半熟の黄身がとろっとパンに滲む。

ドラマ上ではたった数秒だけのなんてことない生活の一部だけど、気取らないラフな食べものを気心の知れた人間と分けあい、その飾らないおいしさを共有することがどんなに楽しく尊く、そして得難いことか。このドラマを初めて観たときよりだいぶ大人になったので、そんなことをもう骨の髄から知っている。

夜にはホットプレートで豚バラのお好み焼きを作り、れんこんを表裏じっくり焼いたのにおいしい塩をふって食べた。こういう鉄板焼きをたまにリビングでパートナーと一緒に作って食べると、すごく家族って感じがする。子どもの頃、両親とサザエさんを観ながらホットプレートでお好み焼きと焼きそばを作るのが、日曜夜の定番だった思い出が色濃いからかもしれない。