いぬごや

よくはたらくいぬです

秋と冬を煮詰める夜

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鍋でものを煮る時間が好きだ。肉じゃがとか手羽元煮とか。カレーとかシチューとかロールキャベツとか。オレンジピールとか甘露煮とか。めんどうな下処理をすべて済ませた高揚感のまま、コンロの前に椅子を持ってきて、火と鍋の番をしながら本を読んだりする。

夏の終わりから育てていた金柑が、ぽってりと重たく立派なこがね色の実を鈴なりにつけた。食べ頃になったら砂糖とお酒でシロップ煮にしようと決めていて、白ワインとコアントローとラムのどれにしようか散々迷った結果コアントローに。いざ摘みとったら驚くほどジューシーな甘酸っぱい香りが漂って、植木鉢のそばがまだかすかにいい匂い。食べものを育てるっていいな。皮に切り込みを入れたあと、手にずっと新鮮な果汁の気配が残っている。

今ちょうど、弱火で40分煮詰める工程がそろそろ終わるころ。台所じゅうがアルコールを帯びたあまい柑橘の湯気に包まれていて多幸感がすごい。できあがったら無印で買ってきたふたつの密閉瓶に詰める。こういう作業は深夜にやるに限る。